しかし、黙って話を聞いてみると、コドラクさんが元の体に戻りたがっていたことに関する内容だと
すぐに分かります。どうやらヴィルカスさんも私と同じように彼から話を聞かされていたようです。
それに、話を聞いている感じだとヴィルカスさんもアエラさんほどウェアウルフの力を
ありがたがってはいないようでした。
彼はイスグラモルの墓の伝説を持ち出します。
わたしには何のことかさっぱり分かりませんでしたが、そこに行けば、人狼化を治す手がかりが
あるのでしょうか。
しかしそのお墓には、ウースラド(わたし達がずっと欠片をとったりとられたりしていたあれ)がないと
内部にははいることができないらしく、いまや粉々となったウースラドでは、扉を開ける事ができないようです。
しかしその時、道具は壊れるものだから直せばいい、と、誰もが「できるならやっとるわ!」と思うようなことを
言いながらエオルンドさんがアンダーフォージへと入ってきます。
そしてその手には、驚くべきことに修復されたウースラドが握られていたのです。
なんでも、英雄の炎には強力な力を秘められているそうで、コドラクさんを埋葬した炎により
ウースラドを再び1つに鍛え上げる事ができたとのことでした。
彼はウースラドを私に手渡し、他のメンバーには早々にウースラドの墓まで向かうようにいいます。
これで何とかお墓には入る事ができそうです。このままうまく体も治せればいいのだけれど・・・。
ウースラドは、エルフ達を退けたイスグラモルのものだけに、エルフに対しての特攻効果がついていました。
イスグラモルのお墓は遥か北のウィンドヘルム周辺。
わたし達は旅支度を整えて早速ホワイトランを旅立ちます。
ようやく元の体に戻る方法をつかめるかもしれない。
そんな期待をよせ、足取りがいくらか軽くなる私達でしたが…
獣の血は、そんな私達をまるで嘲笑うかのようにどん底へと突き落とします。
脈打つ獣の血は昼間だというにもかかわらず、私達を再びあの肉体へと変化させてしまいました。
あとすこし・・・あとすこしなのに・・・!
そんな悲鳴にも近い声を上げながら私達の理性は獣の本能に支配されていきます。
いつもとは比べ物にならない興奮と激情に包まれ、
私はついにその時が来てしまったことを理解しました。
そして決定的な今までとの違い…
それは変身した私の瞳の色…
私の瞳の色は血塗られた真紅色へと染まってしまっていたのです。
これまで私は、てっきり完全に病気が進行して、
ウェアウルフに変わってしまうと理性が獣のものと置き換わり、
私自体が消えてしまうものだと思っていました。
しかしそれはとんだ間違い・・・。
脈動する獣の血は、わたしの理性を塗り替えて別のものにするのではなく、
少しずつ、私の理性を作り変えて私自身を変えていきます。
殺したい・・・。ただ獲物を殺しその血肉を味わいたい・・・。
そしてハーシーン様のハンティンググラウンドで一生を過ごしたい・・・。
自分の胸のうちに湧き上がるその願いを自覚すると同時に、私は完全に自分を見失ってしまいました。
とうとう私は・・・ハーシーン様に忠誠を誓う1匹の獣に変わってしまったのです。
なんていう気持ちよさ・・・。
人間のオリから放たれた私は、
下卑た笑みを浮かべながら近くにあった帝国軍野営地まで疾走します。
寝転んで恐怖の視線を向ける負傷兵はまさに動かぬご馳走。
すぐには殺さず、生きたままの彼らにむしゃぶりつき、悲鳴を楽しみながら食事を済ませます。
獲物をすべて食い荒らし、恍惚の笑みを浮かべながら、私はその場で絶頂してしまいました。
なんて気持ちよさなのかしら・・・。
いまや私は自分自身がウェアウルフであることをしっかりと認識する事ができ、
自分の頭で考えてこうして狩りをする事ができるようになっていました。
狩りをしているとまるでハーシーン様がほめてくださるような気がして
とてつもない幸福感へと包まれるのです。
もっともっとハーシーン様に褒めていただくために・・・そして自分の快楽のために
私はさらなる獲物を求めて近くの村へと向かいます。
そう、あの村は確か・・・ロリクステッドだったかしら・・・。
きっとあそこもまた、獲物がたくさんいるに違いないわ・・・。
あははは!みんな私を見て逃げてる!無駄なのに!
もっと!!
もっとよ!!
獲物をもっと!!
ああああああ気持ちいぃぃぃぃぃ!!
私は再び涎を撒き散らしながらその場で絶頂し恍惚の笑みを浮かべます。
そんな私を見て「ひっ」と可愛い悲鳴を上げる少女が一人。
少女は私の爪に深々とえぐられて吹き飛ぶとすぐにそのまま動かなくなりました。
獲物を狩れば狩るほど、私の能力は上がり、爪がさらに鋭く、より効果的に変化していきます。
もう誰も私の邪魔をするものはいない・・・。
私は笑みを浮かべながらそう確信するのでした。