彼の話では、娘さんはまるで巨大な熊かなにかに切り裂かれたかのごとくズタズタにされて
死んでしまったとのことでした。そしてその犯人がファルクリースの牢屋に捕まっているということを
聞いた私たちは早速その人物に会いに行くことにしました
牢屋につかまっていたのはシンディングという「人間」の男の人でした。
彼の話を聞いてみると我を忘れて少女を襲ったという非常に興味深い内容でした。
そして彼が私に見せたのものがまさに「ハーシーンの指輪」だったのです。
彼は変身を意のままに行う事ができるという伝承のひとつを聞いて
この指輪を手に入れたそうです。
しかし、なぜかハーシーンはその指輪に呪いをかけて、
変身を意のままに操るどころか、不定期に変身が始まるようにしてしまったというのです。
それによって彼は少女に出会ったタイミングで変身し、その少女を手にかけてしまったということでした。
そう、彼も例に漏れずウェアウルフだったのです。
彼が儀式か感染か、どちらの方法でウェアウルフになったのかは分かりませんが、
呪いがかかり、本来の効果を得られなくなってしまったことは確かなようでした。
私は彼から指輪を譲り受けて、呪いを解いてもらうためにハーシーンと接触を行うことにしました。
彼の話では、特殊な獣がファルクリース周辺に生息しており、その獣を倒すことで
ハーシーンと話す事ができるそうです。
彼から譲り受けたその瞬間に指輪は不思議なことに私の皮膚を貫通し、
そのまま指にすっぽりとはまってしまいました。
体の奥底に眠る獣の本能がざわつきだすのを感じましたが、
もうなりふりに構ってはいられませんでした。
彼は私に指輪を渡すとウェアウルフに変身し、そのままどこかへ行ってしまいました。
これがハーシーンの指輪・・・。
しかし明らかに指輪は呪われた嫌な雰囲気を放っており、
装備者に悪影響を及ぼすことは明らかでした。
一刻も早くハーシーンと接触しなければなりません。
シンディングさんの情報を元に、ターゲットである獲物まで近づき
見事しとめることに成功します。
そして私たちは驚くものを目にすることになりました。
その獲物の亡骸からレイタイのようなものが出現し、私に話しかけてきたのです。
ハーシーンは願いを聞いて欲しくば、その指輪を盗んだ彼、
シンディングさんを探して殺すように私に言います。
私が返事をためらうのを見て彼は追い討ちの言葉を残してそのまま消えてしまいました。
ハーシーンの話では、シンディングさんはブローテッドマンの洞窟に向かったといいます。
あの人を殺すなんてそんな・・・。そんな思いを胸にひとまず私たちはその洞窟まで向かうことにしました。
ひょっとしたら話し合いで何とかなるかもしれないし・・・。
しかしそんなことを思った矢先、あの脈動が再び全身を襲ったのです。
指輪の呪われた効果のせいなのでしょうか。
まだ夕方にもかかわらず、私の体はウェアウルフへと変身を始めます。
また呪いは周囲の者にも影響が及ぶらしく、リディアちゃんも同様に
ウェアウルフへと変わってしまいました。
獣の本能に理性を支配された私たちは、再び狩りを始めます。
一人目、猟師。
驚きおののく彼女をそのままバラし、食い散らかします。
二人目、同じく猟師。
少しは抵抗してきましたが、私がひきつけている間にリディアが後ろから牙を浴びせ、
すぐに彼もまた食料へと変わりました。
三人目、盗賊。
四~六人目、人間を襲っていた吸血鬼たち。
吸血鬼たちの肉は、腐ったような味がしてとてもおいしいとはいえませんでしたが
彼らが殺し終えていた3人の人間をおいしく頂いて口直しする事ができました。
七人(?)目、巨人のメス。
色が紫がかっていてあまりおいしそうではありませんでしたので食べるのはやめておきました。
そして私たちが次に目指したのは砦。
獲物がうじゃうじゃといる、砦でした。
私たちは雄叫びを上げて彼らに襲い掛かります。
逃げ出す者、果敢にも立ち向かってくる者、遠くから矢をつがえる者、様々です。
でも、結局は同じ。
私たちは彼らを一人残らず食らうと今度は砦の内部へと侵入します。
睡眠中の兵士たちを襲い、お腹に収めます。
そして最深部まで進んだところで、ようやく私たちは元の体へと戻る事ができました。
理性を失っていた私たちはここがどこかも分かりません。
しかし、砦を戻るにつれて、やはりというか、自分たちの所業を振り返ることになってしまいます。
こ、これを全部私たちがやっただなんて・・・。
私達は震える手足を抑えて骨の散乱する砦を後にしました。
道に転がる骨を見ては、あぁ、この道を通ってきたんだな、なんて。
私、ちょっと心が壊れてきたかも。
私たちはお互い無言のまま道を進み、そして目的地の洞窟まで到着しました。
ここで今日はおしまい。
次回は、洞窟での戦いが始まります。